砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「チナ様!」

どこかで聞いた事のある声に、私は診療所を出た。

「イマードさん!」

「そこにおいでですか。」

イマードさんは馬を降りると、私の側に来た。

「皇太子殿下からの言付けです。」

「アムジャドからの?」

イマードさんは私に一枚の紙をくれた。


【チナ。今日君を抱きしめる事ができないのは、残念で仕方ない。
 だが原因不明の病気がサハルで流行っている事も、今日ジアーの病院から聞いた。隣国にはできるだけ早くの要請を頼んでいる。チナも頑張れ!】

走り書きで書いたような、アムジャドの文字。

「アムジャド……」

それを見るだけで、温かい気持ちになれる。

「イマードさん。ありがとうございます。」

「いいえ。殿下が直々に行きたいと申すので、代わりに私が来たのです。」

私は思わず笑ってしまった。

アムジャドがここに来たいって言ったら、またテントごと来るのかしら。

「よく笑っていられますね。この非常事態に。」

「逆よ。笑ってないと、乗り越えられないのよ。」

私はイマードさんに、作り笑いを見せた。
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