砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
出た温度は、微熱だった。

「大丈夫みたい。風邪でもひいたのかな。」

「風邪?立派な病気だ。」

アムジャドは私に上着を羽織らせると、馬に乗せた。

「Drドイ。チナの病気が酷くなる前に、彼女を連れて行くよ。」

「おうよ。どうせ病気だろうとなかろうと、チナを連れて行くのは、アムジャド皇太子のお得意事でしょうに。」

そう言うと土井先生は私に、風邪薬をくれた。

「これを飲んで、ゆっくり休め。」

「はい。」

そして私とアムジャドを乗せた馬は、サハルを飛び出した。

改めてバスが通る道を、馬で駆け抜ける。

「こんな危険な道だったんだ。」

「そうだな。途中、瓦礫が落ちて来そうな場所もあった。道を整備しないとな。」

アムジャドと一緒にいると、この国の近い未来が見えてくる。

私はそれにドキドキワクワクする。

「アムジャド、寒くない?」

「これぐらいは平気だ。」

アムジャドの身体からほんのり温かみが感じられる。
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