砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
ベッドに寝かせられると、私の息は荒くなった。

「どうしたと言うんだ。風邪じゃなかったのか。」

私はアムジャドの腕を掴んだ。

「アムジャド。私を置いて、今直ぐ部屋を出て。」

「なに?」

「これは、サハルで流行っている風土病よ。周りに移ったら大変な事になる。」

「分かった……」

アムジャドは、サヘルをはじめ女中達に、部屋から出て行くように指示をした。

「薬は、サハルにあるんだな。」

「うん。」

はぁはぁと荒く呼吸をしながら、私は目を瞑った。

あの子達、こんな苦しい思いをしていたなんて。

その上、お母さん達とも離れ離れにされて、悲しい思いをしただろうに。

もっと側に寄り添ってあげればよかった。


「チナ!しっかりしろ!」

アムジャドの声が、遠くに聞こえる。

「今直ぐに、サハルから薬を持って帰ります!」

イマードさんが、大きな声をあげた。

「イマード。頼む。」

「はい!」

その時だった。
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