砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「チナ!チナ!!」

アムジャドの、私を呼ぶ声が聞こえた。

「アムジャド!」

気づけば、私の目からは涙が出ていた。

「大丈夫か?チナ。」

「アムジャド……何でここに?」

「チナが心配で、ずっとここにいたんだ。」

私の目からは、また涙が出た。


死ねない。

アムジャドを置いて、死ぬ事なんてできない。


「サハルの診療所の子供達、何人か死んでいる?」

「分からない。道が塞がれていて、そういう情報も一切入ってこない。」

でも分かる。

あの子達は、命を落とした子達だ。

「アムジャド……私、まだ生きたい。」

「当たり前だ。死なせてたまるか。」

アムジャドが私の手の甲に、キスをした。

「今、イマードが現場に行って、道を通そうとしている。薬さえ手に入れば、チナも助かるはずだ。」

「でも、助からない子供もいた。」

「チナは助かる。僕が保証する。」

「アムジャド……」


まだ生きたい。

アムジャドと一緒に生きていきたい。

神様、お願い。

この祈りを叶えさせて。

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