砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「待って。アムジャド。」

私はアムジャドの頬に流れる涙を拭った。

「私達には、私達にしかできない仕事があるわ。それを投げだすなんて、できない。」

「僕には、弟がいる。弟に皇太子を譲ればいいんだ。」

「ダメよ。アムジャドにしか、できない事よ。この国の人達の為に、皇太子の座を降りては駄目。」


みんな、アムジャドがこの国の王になる事を、待ち望んでいる。

この国は、アムジャドを必要としている。

それを変えてはいけない。


「私こそ、王妃の座を辞退する。医者をやりながら王妃もやるなんて、私には無理だもの。」

「駄目だ、駄目だ。チナ以外の妻なんて、僕には必要ない!」

こんなに弱々しいアムジャドを見るのは、初めてだった。

まるで、母親に捨てられるのを恐れている子供みたいだ。

「アムジャド。泣かないで。私、必ず病気を治すから。そうしたらまた、一緒にいたい。」
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