砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
「なんだか、他人事みたいだな。」

津田先生が、後ろから話しかけてきた。

「アムジャドの挙式と言う事は、千奈ちゃんの挙式でもあるんだろ。」

「まあ、そうですけど。」

他人事だと思えるのは、私の中にまだ皇太子妃と言う自覚がないから。

挙式をしたら、そんな自覚も芽生えてくるのかな。


「それにしても、千奈ちゃんとアムジャドが結婚か。」

津田先生が感慨深そうに、涙を拭う。

「千奈ちゃん、辛かったらいつでも、戻ってきていいんだよ。」

「はい。って言っても、ずっとここにいますけど。」

医者になった時は、こんな私でいいのかと悩んだ時もあったし、この治療方針でいいのか、土井先生ともぶつかり合った時もあった。

でも今では、そんな時間さえ愛おしいと思う。

「ところで、同じ皇太子妃候補だったジャミレトさんは、どうするんだ?」

「それが……」
< 307 / 311 >

この作品をシェア

pagetop