砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~
私は深呼吸をすると、アムジャドの病室に再び戻った。

そこにはもう、ジャミレトさんの姿はなかった。

「ジャミレトさんは?」

「もう帰ったよ。」

アムジャドは私を見ながら、微笑んでいた。

「チナ。側に来てくれ。」

アムジャドに吸寄せられるようにして、私はアムジャドの手を握った。

「ごめん、チナ。驚かせてしまったね。」

「ううん。私の方こそごめん。大きな声を出してしまって。」

ああ、なんだかアムジャドの顔を見ていると、心が落ち着く。

「チナが病室を出て行った後、僕は寂しさに襲われて、何て事をしてしまったのだと、自分を責めたよ。」

「アムジャド……そんな……」

「チナ。チナだけなんだ。僕が自分自身で選んだのは。」

涙が出そうになった。
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