次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜
指揮をしているのは、全く音楽を知らないようなハゲたおじさん。
合唱で素人がよくやる四拍子を振っているだけ。ついでに演奏とはズレまくっている。

「…噂の落ちこぼれ吹奏楽部だ」
誰かが言った。

ショックすぎて入学式に集中出来なかったのは言うまでもない。


入学式も終わり、先生の声が教室に響いている。

「この後は、帰ってもよし、部活を見てもよし!1年の完全下校は5時半だからそれは守ってね!以上、解散!」

ザワつく教室で、舞奈が私の元に来た。

「ねぇ、吹奏楽部見に行こうよ」
「…は?正気?」

私が驚いた顔をすると、舞奈は言葉を濁す。

「だって…佐々木先輩と約束しちゃったし、ちょっと気にならない?」

佐々木先輩とは、1年前ここの学校に入学したサックスの先輩で、入学式の動画を見せてくれた人だ。

「気になるっちゃ気になるけど…」
「じゃ、決まり!行こ!」
「え?今すぐ?!」

舞奈に手を引かれ教室から出ようとすると、

「…あ、あの!!」

黒髪でおさげの、いかにも大人しそうな女の子が話しかけてきた。

「吹奏楽部…行くんですか…?あの、一緒に行っても…いいですか…?」

ぽそぽそ喋る彼女のバッグには、トロンボーンのストラップがついていた。

「いいよいいよ!私、舞奈!あなた、名前は?」
「あ、えと、床枝…絵美子…です」
「わぁーよろしく!私もトロンボーン!」
「え…ほんとですか…?やっぱりトロンボーンは…」

話の長い舞奈と絵美子を引っ張って、音楽室に向かった。
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