次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜

「失礼しまーす…」
私はそっと音楽室のドアを開けた。

「渚ちゃん!舞奈ちゃん!待ってたよー!」
出迎えてくれたのは、テナーサックスを持った佐々木先輩だった。

「ご無沙汰してます、先輩」
「お久しぶりでーす!」

閑散とした音楽室に目を奪われていると、先輩が申し訳なさそうに言った。

「誘ったのに、こんな状態でごめんね?私が入った時にはこんなじゃなかったんだけどね」
「じゃあ、いつから?」

話していると、音楽室のドアが開いた。

「あ」
「…あ!ピンの子!」

あの彼だった。前髪には別のピンが止まっている。

「さっきピン教室に忘れたんだよ、これ、ありがとな」
「いえいえ」

ピンを受け取る時に、ブレスレットが見えた。───スネアのチャームがついたブレスレットが。

「…あなたも打楽器?」
「え?君も打楽器なの?!うわ偶然!」

彼は嬉しそうに笑った。
そこに、打楽器のスペースから先輩が来た。

「2人とも打楽器?こっちおいで!」
「あ、私はまだ…」
「そうです!俺ら2人とも打楽器です!」

彼は勝手にそう言って私の手を取った。
そして打楽器のスペースに引っ張って行った。

こんな落ちこぼれた部活に入るつもりはなかった。けど、他に入れる部活はそんなに無い。

私はしょうがなく引きずられることにした。


「えーっと、2人は経験者?」

先輩が聞いてきた。

「はい、中学でやってました」
「いいえ!やったことないです!」

………は?

なんと彼はやったことが無いという。
いや、やったこと無いのに、なんで私を引っ張ったんだろう。

先輩も困惑していた。それはそうだ。あんなに清々しい顔で当たり前のように来て、未経験だとは思わない。
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