次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜
志乃先輩はもうぐちゃぐちゃな顔で笑う。

「先輩いいい…!!」

私は志乃先輩に抱きついた。
気づけば琴乃ちゃんも私たちをぎゅっとしている。柊もだ。

「皆ぁ、ごめんね、ありがとうね」

志乃先輩はずっと泣いていた。
すると、座席の通路から、志乃先輩の肩を男の人が叩いた。

「…志乃」
「お父…さん…」

志乃先輩のお父さんらしい。
そういえば、志乃先輩の家は部活反対だったっけ。

「志乃、よくやったな」
「…うぅ、うん」
「…部活、頑張ってるんだな、金賞取るくらい」

志乃先輩のお父さんは、首をかくと、こう言った。

「…部活、続けなさい。後悔のないように、やり遂げるなら、続けなさい」
「!!お父さんっ…!」

志乃先輩はもっと泣いてしまっていた。
そんな先輩をお父さんがなだめていた。


後ろの学校からボソッとヤジが聞こえた。

「…落ちこぼれのくせに何なんだよ、あいつらさえいなければ、俺らが代表だったのに…」

は?何それ。
その男を睨みつけてやろうと後ろを向くと、絵美子が立ち上がったのが見えた。

絵美子はカタカタと震えながら、大きく息を吸った。

「…ちょ、絵美…」
「は、花山南は、最高ですっ!!」

絵美子の大声に会場全体が振り向く。
言われた男子は、驚いた顔で絵美子を見た。
彼女は力を使い果たしたのか、か細い声で

「だ、だから…、落ちこぼれじゃ…ない、です…」

と言った。

「…絵美子…」

男子たちはそそくさと会場から出ていった。
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