次の演奏は花山南高校吹奏楽部ですっ!〜部活大好き彼氏が甘すぎる〜
「今日はここまで!ありがとうございました!」

帰りのミーティングが終わり、課題で遅刻してきた舞奈と一緒に帰ろうとすると、

「ごめん、舞奈ちゃん!今日渚借りてもいい?」

柊が私の腕を掴んだ。

「え?全然いいよ!じゃあ渚!私絵美子と帰ってるね!」
「え?!うそでしょ?!」

舞奈は楽しそうに私に耳打ちした。

「なんかあったら報告よろしく!」
「あるわけないでしょ!!」

柊は私を引っ張ってマリンバの前に立った。

「ここ!ここだけ出来ないの!」
「あー…ここは連符だからね、こーしてこう、体を右に動かしながら手も動かす」
「歩くってこと?」
「うーんまぁそんな感じ」

我ながら下手な説明だったと思いながら、右にまわって覗き込む。

「やってみ?出来そうだよ」
「えーっと…っ?!」

ドサッ

と音がして、背中に痛みを感じた。

「ごめん!大丈夫か?!」

目を開けると、天井と、柊の顔。

「え?どういう…?」
「俺がコケて、渚を押し倒しちゃった」

私はあまりの近さに驚いた。
顔が熱くなってくる。顔を隠そうにも、柊の手が上にあるから腕が動かせない。
とりあえず顔を逸らした。

「…渚」

耳に息がかかる。体を震わせながら、やっとの思いで声を出した。

「し…柊…離れてっ…」

そーっと柊が体を起こした。

「ごめん、なんか可愛くて、食べちゃいたくなった、帰ろっか」

柊の意味不明な一言に思考回路をめちゃくちゃにされながら、私たちは帰路に着いた。
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