初恋のゆうこさん
第七話 黄昏暮れる帰り道
窓のカーテン越しに優しく漏れていた夕日も沈み、黄昏に暮れゆく茜色の
西空に一番星が光っているのが見えた。
ちょっと肌寒くなってきて店内のエアコンから暖房の音が聞こえてきた。
もうあっという間に二人の楽しい時間は過ぎ去って行った。
このまま時間が止まればいいのに、本気でそう思った。
「あっもうこんな時間になっちゃったね、そろそろアタシ・・・」
「う、うん、そうだね、時間が経つのは早いね」
急に時間が経つのが一気に加速されていくように思えた。
“チョッと待って!もっと話して居たいよ”と叫びたかったけれど。
「裕子さん、あの・・・」
「えっなに?」
少し不安気に“何言いだすのかしら?この人は?”という様な表情を一瞬
だけ彼女が覗かせた。
「あの、またいつか会いたい、会えるよね?」堪らず僕は言ってしまった。
「う、うん、いつか、ね、また」とだけしか彼女は言ってくれなかった。
本当はまた会うのが嫌なのだろうか?迷惑なのだろうか?
そんな邪推が沸き起こった嫌な自分がそこに硬直した様に佇んでいた。
僕は子供っぽい、あの時の小川君なんだろ?また安心して会ってよ~!と
彼女に言いたかったけど、しつこい誘いをする“男”に見られたく無かった
僕は、再び誘う言葉を断念した。
そんな胸中を察してくれたのか、彼女は振り向きざまに微笑みながら、
「またいつかここに来ようね!小川君!」と言ってくれた。
僕は飛び上るほど嬉しかった!
「わ~い!わ~い!」心の中で叫んで踊っていた。
僕は正しく完全に15歳だったあの頃に戻っていた。
店を出た、木枯らしがヒュ~ヒュ~と鳴り、風がとても冷たかった。
「寒いね、大丈夫?」と声を掛けたら彼女は「うん、平気だよ」と言って
「バス停でいいよ」と言ったけど、近くの駅まで送ってあげた。
わずか30分足らずだったクルマの中で二人は特に何も会話はしなかった。
彼女はただ黙って窓越しに流れて行く街の灯りをぼ~っと眺めていた。
僕はそんな彼女に気遣い、そ~っと静かに、ただ黙々とクルマを走らせた。
結局、お互いに今の家庭や家族の事などは一切話さなかった。
聞きたかったけど無理して我慢したとか、そういう事では無く本当に、ごく
自然に聞こうとはしなかった。彼女もそうだった。
と言うより今僕たちは15歳だったあの頃にタイムスリップしたかの様に
懐かしい中学生時代に戻っているのに、敢えてそれを現実に引き戻したく
は無かったのだ。
彼女もきっとそうであったに違いないと素直に思えた。
駅の前で彼女を降ろして見送った。
彼女は手を振って「またね」そう言ってくれたのがせめてもの救いだった。
僕もまた手を振り「またね」同じ言葉を交わし合った。
駅の中へ遠ざかって行く裕子さんの後ろ姿を見つめていた。
よけいに寂しさが増して切ないからホームの中までは入らずに駅の外で彼女
を見送ったのだ。
ピ~~~~・・・夜汽車の音色が寒空いっぱいに鳴り響いた。
裕子さんの乗った列車が出たのかなあ~?
彼女の乗った電車が走り去って見えなくなっても、しばらくは暗くて寒い駅
の片隅で佇んでいた。
辺りはすっかり夜の帳が降り始め駅の周りの田んぼの向こうに散在する家々
の明かりがチラホラと灯っていた。
時折に吹く冬将軍が来た様な冷たい風が肌を刺すように痛かった。
寒いなあ~、背中のみぞおちが凄く痛くなってきた、辛いなあ、切ないなあ。
裕子さんはもう行ってしまった・・・
今度はいつ会えるのかなあ?でも、もう会えないような予感がしていた。
空高くには、でっかい四辺形の美しいペガサス座が見えていた。
窓のカーテン越しに優しく漏れていた夕日も沈み、黄昏に暮れゆく茜色の
西空に一番星が光っているのが見えた。
ちょっと肌寒くなってきて店内のエアコンから暖房の音が聞こえてきた。
もうあっという間に二人の楽しい時間は過ぎ去って行った。
このまま時間が止まればいいのに、本気でそう思った。
「あっもうこんな時間になっちゃったね、そろそろアタシ・・・」
「う、うん、そうだね、時間が経つのは早いね」
急に時間が経つのが一気に加速されていくように思えた。
“チョッと待って!もっと話して居たいよ”と叫びたかったけれど。
「裕子さん、あの・・・」
「えっなに?」
少し不安気に“何言いだすのかしら?この人は?”という様な表情を一瞬
だけ彼女が覗かせた。
「あの、またいつか会いたい、会えるよね?」堪らず僕は言ってしまった。
「う、うん、いつか、ね、また」とだけしか彼女は言ってくれなかった。
本当はまた会うのが嫌なのだろうか?迷惑なのだろうか?
そんな邪推が沸き起こった嫌な自分がそこに硬直した様に佇んでいた。
僕は子供っぽい、あの時の小川君なんだろ?また安心して会ってよ~!と
彼女に言いたかったけど、しつこい誘いをする“男”に見られたく無かった
僕は、再び誘う言葉を断念した。
そんな胸中を察してくれたのか、彼女は振り向きざまに微笑みながら、
「またいつかここに来ようね!小川君!」と言ってくれた。
僕は飛び上るほど嬉しかった!
「わ~い!わ~い!」心の中で叫んで踊っていた。
僕は正しく完全に15歳だったあの頃に戻っていた。
店を出た、木枯らしがヒュ~ヒュ~と鳴り、風がとても冷たかった。
「寒いね、大丈夫?」と声を掛けたら彼女は「うん、平気だよ」と言って
「バス停でいいよ」と言ったけど、近くの駅まで送ってあげた。
わずか30分足らずだったクルマの中で二人は特に何も会話はしなかった。
彼女はただ黙って窓越しに流れて行く街の灯りをぼ~っと眺めていた。
僕はそんな彼女に気遣い、そ~っと静かに、ただ黙々とクルマを走らせた。
結局、お互いに今の家庭や家族の事などは一切話さなかった。
聞きたかったけど無理して我慢したとか、そういう事では無く本当に、ごく
自然に聞こうとはしなかった。彼女もそうだった。
と言うより今僕たちは15歳だったあの頃にタイムスリップしたかの様に
懐かしい中学生時代に戻っているのに、敢えてそれを現実に引き戻したく
は無かったのだ。
彼女もきっとそうであったに違いないと素直に思えた。
駅の前で彼女を降ろして見送った。
彼女は手を振って「またね」そう言ってくれたのがせめてもの救いだった。
僕もまた手を振り「またね」同じ言葉を交わし合った。
駅の中へ遠ざかって行く裕子さんの後ろ姿を見つめていた。
よけいに寂しさが増して切ないからホームの中までは入らずに駅の外で彼女
を見送ったのだ。
ピ~~~~・・・夜汽車の音色が寒空いっぱいに鳴り響いた。
裕子さんの乗った列車が出たのかなあ~?
彼女の乗った電車が走り去って見えなくなっても、しばらくは暗くて寒い駅
の片隅で佇んでいた。
辺りはすっかり夜の帳が降り始め駅の周りの田んぼの向こうに散在する家々
の明かりがチラホラと灯っていた。
時折に吹く冬将軍が来た様な冷たい風が肌を刺すように痛かった。
寒いなあ~、背中のみぞおちが凄く痛くなってきた、辛いなあ、切ないなあ。
裕子さんはもう行ってしまった・・・
今度はいつ会えるのかなあ?でも、もう会えないような予感がしていた。
空高くには、でっかい四辺形の美しいペガサス座が見えていた。