prologue
私の座る窓際の席の机にはいつも一輪、アネモネの切り花がコップに入れられている。
コップに張られた水に窓から差し込む光が入り、きらきらと反射する。
確か、花言葉はマイナスなものも多かった気がする。
でもその凛とした姿が好きで、私はいつもアネモネの席に座っていた。
彼が店長さんと話しているのが目に映る。
くしゃっと笑ったその顔に思わず彼のことを見る。
私の視線に気づいたのかこちらを振り返る。
私はあわてて視線を本に戻した。
ここに来れるのもあと一回。
だって、明日卒業してしまえば、私がここに来る建前がなくなる。
明日、卒業式のあとここに来るつもり。
明日から出される季節限定のフラッペを最後に飲みたい。
私の一番好きな桜のフラッペ。
最後にもう一度。