prologue
翌日。
卒業式、謝恩会を終えた私はみんなとの別れを惜しむのもほどほどに、校門を出た。
「お母さん、ちょっと待ってて。」
駅への途中、私はカフェの前でそう声をかけ、店の中に入っていった。
「こんにちは。桜のフラッペ、一つ。テイクアウトで。」
「今おつくりしますね。」
私はカウンターの店長さんにオーダーをしてお金を払った。
「おーい、風見君。あの子、来たよ。」
店長は材料を出しながら、バックヤードに声をかけた。
風見、それは彼の名前。
しばらくして奥から出てきた彼の手には小さなブーケが握られていた。
「ご卒業、おめでとうございます。
少し、フラッペができるまででいいんです。
僕に時間をくれませんか。」
私が頷くと、彼はいつもの笑顔を浮かべる。
「最初にここにいらしたのは、お友達とでしたよね。
それから一人でいらっしゃるようになって、はじめのうちはいつもブラックコーヒーのことが多くて。」