あやかしの集う夢の中で
「桜介!」



愛理は雪菜に抱きつかれている桜介を見て、桜介の名前を叫んでいた。



「坊や、いい夢を見させてあげる」



雪菜は桜介の耳元でそうささやくと、何の前触れもなく桜介にキスをした。



すると、桜介の体はみるみるうちに冷たくなっていき、桜介は反撃もできないままに目を閉じた。



そして雪菜が桜介から手を放すと、桜介はまるで意思を持たない人形のようにそのまま地面に倒れ込んだ。



「何にも知らないかわいい坊やはこういう技に弱いのよね。

まぁ、私の魅力の前に抵抗できる男なんていないけど」



雪菜がそう言って笑いながら桜介を見下ろしているのを見て、愛理の心にマグマのような怒りが沸いてきた。



桜介を坊や呼ばわりし、桜介のうぶさにつけこんで幻惑したことは万死に値するほどに罪深い。



愛理は目の前にいる雪女に敵意をむき出しにして、怒りのままに叫んでいた。



「ねぇ、おばさん。

年増のくせにいい女ぶってるのがウザいんだけど!」



愛理の怒りに震える声は雪菜に届き、雪菜はまた妖しく笑いながら、愛理にこう言った。



「セクシーさの欠片もないお子ちゃまが、この私に敵対しようなんていい度胸だね。

貴様はこの雪菜様にケンカを売ったことを後悔しながら死ねばいい」
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