あやかしの集う夢の中で
「怒ってんのか、愛理。

急に後ろなんか向いちゃってさ」



桜介の的外れな言葉に愛理は怒り気味に言葉を返した。



「怒ってなんかないよ！

ただ桜介が無事だったから安心してるだけじゃん！」



「怒ってないなら、後ろなんて向くなよ。

それじゃ、先を急ぐか」



桜介はそう言って、後ろを向いている愛理に歩み寄った。



そして愛理の肩をポンと優しく叩き、桜介は愛理の顔をのぞき込んだ。



すると、愛理は目を真っ赤にして泣いていた。



桜介は何で愛理が泣いているのかがわからなくて、戸惑いながら愛理に話しかけていた。



「泣いてるの？ 愛理。

いったい何があったんだよ」



桜介が愛理の顔を見つめてそう言ったとき、愛理は右手で涙を拭ってこう言った。



「泣いてなんかないよ！

さっきの夢妖怪との戦いで目にゴミが入っただけだから。

それにさ、頼りない桜介に心配されるような私じゃないから。

私は桜介なんかより、ずっとずっと強いから」



愛理は自分が泣いていたことを否定すると桜介から目線を外し、まだ微かに光を放っている舞の大切な夢の方に目を向けた。



「先に進むよ。

早くしないと舞ちゃんの大切な夢の明かりが消えちゃうかもしれないから。

戦いはまだ終わってないよ」



愛理はそう言うと、桜介を残し、一人で舞の大切な夢がある方へと歩き出した。
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