あやかしの集う夢の中で
(チャンスは一度きり。

今は無視されている私の存在が敵の視界に入ったなら、私の攻撃は当たらない。

呼吸を整えて、すべての意識を集中しなくちゃ。

目の前の敵を一撃で仕留めるために)



意識を集中し始めた愛理には、巨大な黒いドラゴンの動きがスローモーションに見えていた。



一定の速さでしか時間は過ぎて行かないはずなのに、愛理の時間だけが今、時を止めようとしているみたいだ。



そんな中で愛理は静かな気持ちで電撃の弓の弦を引き、完全に巨大な黒いドラゴンの動きを見切ると、電撃の矢を解き放った。



そしてその電撃の矢は今までになかったような猛スピードで巨大な黒いドラゴンへと飛んでいき、敵の頭付近の胴体に深々と突き刺さった。



(よし!

当たった!)



愛理は自分のイメージ通りの攻撃によろこびながら、巨大な黒いドラゴンが苦しみながら声を上げているのを聞いていた。



愛理が放った電撃の矢は確実に巨大な黒いドラゴンにダメージを与えていた。



巨大な黒いドラゴンから逃げ惑っていた桜介も足を止めて振り返り、悶え苦しむ敵の姿を見つめていた。



形勢逆転の兆しが見えてきたことに桜介はよろこび、大きな声で叫んでいた。



「やるじゃないか、愛理!

助かったぜ!」



桜介がそう言ってはしゃいだその後に、その場の空気が変わり始めた。



巨大な黒いドラゴンは愛理の一撃に悶え苦しみながらも、赤色の瞳を愛理に向けて、愛理のことをにらんでいた。
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