あやかしの集う夢の中で
「春野が如月舞の夢の中に入ることは可能だ。

魂の術式を使えば、春野の魂も如月舞の夢の中に入り込める。

ただし……」



時宗はそこまで言うと言葉を区切って、桜介の目をのぞき込んだ。



「春野が如月舞の夢の中で夢妖怪に殺されたなら、春野の魂はもう二度と肉体へはもどらない」



オカルト部のメンバーたちは時宗が口にした事実に驚いていた。



魂が肉体に戻らないということは、もう二度と目を開かないことであり、口をきかないことである。



それは人間の事実上の死を意味する。



でも桜介はそのリスクを理解しながら、時宗に話しかけていた。



「なぁ、時宗。

夢の中では思いの強いヤツが最強だって言ってたよな。

だとしたら、夢の中ではオカルト部の部長であるこのオレが最強だ!

オレが舞ちゃんを救いたいって気持ちはさ、絶対に他の誰にも負けないんだ!」



いつもお茶らけていて、愛理に怒られているイメージのある桜介が、今まで見せたことのないような真剣な顔でそう言った。



そしてそんな真剣な顔をしている桜介を見て、愛理は正直、戸惑っていた。



(桜介があんなに真剣な顔をしているのを見たことないよ。

いつもは何をやってもいい加減で中途半端な桜介なのに……。

真剣な桜介はいつもよりカッコいいよ……。

でも桜介が真剣な理由が舞ちゃんだっていうのが少し悔しい。

桜介はかわいい子のためなら、相手が誰でも真剣になるのかなぁ?)
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