あやかしの集う夢の中で
「如月舞。

君は毎日、怖い夢を見ると言ったが、それは自分が大切にしている夢が壊れる夢じゃないか?」



今までみんなの後ろにいて、しゃべらずにいた時宗が急に舞に話しかけた。



舞は時宗に投げかけられた質問に対して少し考え、憂うつそうな顔でこう答えた。



「時宗君の言う通りだよ。

私ね、いつもピアノの夢を見るの。

それで私は毎回、ピアノで何かの失敗をするの。

私は怖くて目を覚ますんだけど、目を覚ます度に憂うつな気持ちになって……。

もう大好きなピアノを弾くのも嫌になっていて……」



元気なさそうに舞がそう言ったとき、時宗がうつむいている舞に向かって、ハッキリとこう言った。



「君が見ている悪夢の原因は夢妖怪の仕業だ。

ヤツらは君が大切にしているキラキラした夢に群がっている。

君の大切な夢を壊すために」



「夢妖怪……。

私はその夢妖怪に取り憑かれているの?」



不安そうにそう言った舞に時宗は坦々と話を続けた。



「その通りだ、如月舞。

君は夢妖怪に取り憑かれ、自分の大切な夢を壊されようとしている。

そして君が夢妖怪に完全に夢を壊されたとき……」



時宗はそこまで言うと舞を見つめ、語気を強めてこう言った。



「君は二度と笑わなくなるだろう」



舞は時宗の言葉にショックを受けて、呆然としながら時宗を見つめていた。



舞は自分の体調不良の原因を初めて知ると、恐怖で血の気を失っていた。
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