あやかしの集う夢の中で
「そんな……。

私が夢妖怪に取り憑かれているなんて……」



そうつぶやいて、顔面蒼白になっている舞を見て、桜介は途端に舞が心配になってきた。



舞は品のある一輪の薔薇のような魅力的な女の子だが、その反面で打たれ弱い性格の女の子だ。



桜介はそんな舞のこと思うと、無神経な時宗に怒っていた。



「おい、時宗。

お前はもっと言葉を選んで舞ちゃんと話ができないのかよ。

舞ちゃんが怯えてるだろ。

舞ちゃんに謝れよ」



「オレは如月舞に受け入れなくてはならない事実を正確に伝えたまでだ。

事実をちゃんと受け入れなくては、問題を解決することはできない。

オレにはお前の感情論につきあっている暇はない」



「なんだと！」



元々、仲の良くない二人が舞の部屋で言い争いになっていた。



そんな険悪なムードを断ち切るために、愛理は二人の間に入って、真剣な顔でこう言った。



「今はケンカしているときじゃないでしょ。

私たちは舞ちゃんに元気になって欲しくてここにいるの。

その気持ちはみんな同じはずでしょ。

だったら協力しなくちゃ」



愛理は一ノ瀬中学のナンバー1美少女とか言われているけど、気が強くて、自分の意見をハッキリと口にするタイプの女の子だ。



そんな愛理は後輩の女子からも人気が高い。



そしてそんな愛理が言った強い言葉はこの場にいる全員を納得させていた。
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