あやかしの集う夢の中で
「さすがは時宗君ですね。

カノンは時宗君を頼りにしてます」



カノンがそう言って時宗に微笑みかけると、桜介はさらに時宗に嫉妬していた。



「それじゃ、時宗君。

早速、その魂の術式を使ってさ、舞ちゃんの夢の中に入ろうよ。

夢妖怪を退治するために」



愛理は弾んだ声でそう言ったが、時宗はクールな声でこう答えた。



「如月舞の夢の中に入ることはできるが、夢の中に入るには一つだけ条件がある。

それは如月舞が眠りにつくこと。

そうでなければ、オレたちは如月舞の夢の中に入れない」



時宗が舞の夢の中に入れないと口にすると、桜介が我先にと時宗に突っ込んだ。



「舞ちゃんが寝てないと夢妖怪を倒せないんじゃ、お前の魂の術式とやらは少しも役に立たないじゃないか。

ああ、時宗なんかに期待するんじゃなかった。

話が少しおかしいと思ったんだ」



桜介のその言葉に時宗は表情も変えなかったが、その代わりに愛理が桜介に顔を近づけて、怒りながらこう言った。



「何で桜介は時宗君にそんな言い方をするの?

時宗君は舞ちゃんと私たちのためにここに来てくれてるんだよ」



「私もそう思います」



愛理に続いてカノンも桜介に顔を近づけて話し始めた。



「桜介君は時宗君に協力的じゃないです。

今はみんなで力を合わせて、舞ちゃんを救うときです!」



桜介は二人の女子に怒られると、バツが悪そうに首をすくめた。



「ごめん。

気をつけるよ。

オレもちゃんと時宗に協力する」



桜介が反省気味にそう言うと、愛理はその言葉に満足してこう言った。



「素直でよろしい。

もうケンカしちゃダメだからね」
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