あやかしの集う夢の中で
魂の術式
時宗は寝ている舞を見下ろしたあとに、何やらカバンの中を探り出した。



そしてカバンの中から数珠と白いお札を取り出すと、静かな声でみんなに言った。



「前にも言ったように夢妖怪と戦うことには危険が伴う。

もしかしたらお前たちが夢妖怪に殺られて、二度と目を覚まさないということもあり得る」



みんなに背を向けながらそう話した時宗はそこで言葉を区切り、みんなの方を振り向いた。



「それでも本当に行くのか?

如月舞の夢の中へ」



時宗のその問いかけに愛理が最初に答えていた。



「もちろん行くわ。

舞ちゃんを救うために」



「カノンも行きますよ。

舞ちゃんはカノンの友達です」



オカルト部の女子の意見が出揃うと、桜介は珍しく真面目な顔で時宗にこう言った。



「夢の中の世界では思いが強いヤツが強いんだろ?

だったらオレが夢の中では最強だ。

オレは夢の中で誰にも負けねぇ!」



もしもすべてのことが夢の中の世界みたいに思い通りになるならば……。



桜介は中学三年生になる今でもずっとそんなことを考えていた。



そんな自分の気持ちは時宗みたいな完璧なヤツにわかるはずがない。



オレが願う夢、それは高身長のイケメンになって、かわいい女の子たちにチヤホヤされてモテること。



何も願わずともそれを手に入れている時宗にそんな男子の気持ちはわからない。
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