あやかしの集う夢の中で
「みんなが覚悟を決めているのなら、遠慮なく始めよう」



時宗はそう言うと、みんなの顔を順に見回した。



「それじゃ、目を閉じて、ゆっくり呼吸を整えてくれ」



桜介は時宗の言う通りにすることがしゃくだったが、言われた通りに目を閉じて、ゆっくり呼吸を整えた。



「次に頭の中で如月舞の夢の中へ入っていくイメージを持ってくれ。

それができたなら、オレがお前たちを如月舞の夢の世界に連れていく」



本当に普通の中学生が他の人の夢の中へ行けるのか?



それは部外者が聞いていたら眉唾物のいかがわしい話だと言うだろうが、自分たちは時宗の話を信じるより他はない。



桜介は強く如月舞の夢の中へ入ることをイメージしていた。



そして舞の夢の中に住み着いている夢妖怪を退治することを。



桜介の中でそのイメージが固まったとき、時宗がハッキリとした口調でこう言った。



「それでは、いざ参る。

如月舞の夢の世界へ。

我らが魂よ、夢の世界へいざ行かん」



時宗がそう言った次の瞬間、まるで体が無重力空間に引き込まれていくように軽くなって、世界がぐわんぐわんと歪み出した。



桜介は何が起きているかもわからないままに、歪み行く世界に身を委ねていた。
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