あやかしの集う夢の中で
桜介は時宗の言葉に驚いて立ち上がった。



舞の夢が消えてなくなるなんて、そんなことがあってはならない。



桜介はそう思うと、勢いよく時宗に話しかけていた。



「そういうことなら事情が違う!

行くぜ、時宗。

舞ちゃんを救うために」



そう言って、急に真剣な顔つきになった桜介を愛理はとなりで見つめていた。



(いつもはだらしなくて、いい加減な桜介だけど、そんな桜介が誰よりも友達思いだって私は知っている。

桜介が舞ちゃんのことで真剣になっているのは悔しいけど、私は友達思いの桜介を応援したい。

だって、それが桜介のいいところだって、私は誰よりも知っているから)



愛理は桜介のことを思うと不思議な気持ちになってしまう。



桜介は平凡で少しもカッコよくない幼なじみなのに、自分は他の誰のことよりも桜介を気にしている。



桜介が楽しそうにしてれば、自分も楽しいし、桜介が悲しそうにしていれば、自分も悲しい。



それってやっぱり不思議な気持ちだって自分は思う。



自分は桜介を友達だって思っているはずなのに……。
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