あやかしの集う夢の中で
「おい、愛理。

急にどうしたんだよ。

そんなに強く手を引っ張んなよ」



桜介は自分の手を強く握りしめ、スタスタと前へと進んでいく愛理に話しかけていた。



「今は少しでも早く舞ちゃんを救わなくちゃいけないときなのに、桜介はカノンちゃんにデレデレしててカッコ悪いよ。

桜介はオカルト部の部長なんだんだから、カッコいいとこ見せてよね。

私でも桜介を褒めることができるくらいに」



桜介は愛理に手を引かれて歩いていると、まだ幼かった頃の自分たちを思い出していた。



ボールで家の窓ガラスを割ってしまい家に帰る時間を引き伸ばそうとしていた自分とそんなウジウジしている自分の手を引いて、一緒に謝ってあげると言った愛理。



あの頃から愛理は強くて、自分はいつも強い愛理に叱られていた。



人って、大きくなってもなかなか変われないのかもしれない。



今の自分と愛理みたいに。



スタスタと微かな光が差す方へ歩いていく桜介と愛理のところにカノンがかけ足で近寄ってきた。



そしてカノンはちょっと怒り気味の愛理に話しかけた。



「愛理ちゃんは桜介君には厳しいですよね。

他の男子にはいつも優しく接しているのに」



「桜介が他の男子と比べて、どうしようもなくだらしないからだよ。

私はだらしない桜介を見てるのが嫌なの」



「桜介君って、そんなにだらしないですか?

カノンはそう思わないけど……」



「そうだよね、カノンちゃん。

オレってわりとしっかりしてるよね」



「そんなことない!

桜介はだらしないよ!」



愛理はそう言って、自分の意見を変えなかった。



でも、どうして自分は桜介のことでそんなに意地になっているのだろうと、愛理は心の中で思っていた。
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