あやかしの集う夢の中で
「桜介と時宗君がライバルねぇ……」



愛理はそうつぶやいたあとに桜介に話しかけた。



「桜介が時宗君をライバルと思うなら、それはむちゃくちゃ高いハードルだよ。

ねぇ、桜介。

そんなに無理しなくてもいいんじゃない?」



「無理なんかしてねぇよ。

それに恥ずかしいから、ライバルとか口にするなよ」



桜介はそう言うと、愛理から目をそらして前を向いた。



時宗には本当に負けたくないけど、それ以上に大切なことが今はある。



それはオカルト部の仲間、舞を救うこと。



舞の大切な夢を壊さずに守ることだ。



「先に進むぞ。

時間は限られているからな」



「それくらいわかってるよ!

舞ちゃんを救うのはオレだからな」



言い合いをしながら、スタスタと前に進んでいった二人を愛理とカノンが追っていった。



「桜介、時宗君とケンカしちゃダメだからね」



愛理はちょっとだけ厳しい声で桜介にそう言うと、見慣れているはずの桜介の背中を見つめていた。
< 80 / 171 >

この作品をシェア

pagetop