あやかしの集う夢の中で

「ちょっと桜介、今、カノンちゃんの胸を見て、嫌らしいこと考えてたでしょ」



まだ浮わついた気分でいた桜介の耳に愛理の不機嫌そうな声が飛び込んできた。



愛理は自分の心の中を読み取る天才だ。



桜介はいつも心の中を見透かされ、そして愛理に叱られている。



愛理が自分の心の中を正確に読み取れるのは、愛理の特殊能力だろうか？



だとしたら、愛理はエスパーか？ それとも読心術の使い手か？



桜介がそんなことを思いながら愛理の方を振り返ると、愛理はやはり不機嫌そうな顔で怒っていた。



「桜介は今、カノンちゃんの大きな胸をチラ見してたでしょ」



桜介はズボシを突かれてドキリとしていた。



「そんなことないよ。

オレは別に……」



「絶対にウソだよ。

桜介はカノンちゃんの胸をチラ見してた」



「だから違うって……」



桜介はそう言いながら、無意識のうちに愛理の胸の方へ視線を向けてしまっていた。



愛理は一ノ瀬中学で一番の美少女と言われているけど、意外と胸は小さい方だ。



桜介が声に出さずにそんなことを考えていると、愛理が桜介の心の声を聞いたかのように桜介の心の内を指摘し出した。



「桜介、今度は私の胸に目を向けた！

カノンちゃんと私の胸を比べてた！」



桜介は愛理のエスパーぶりにドキリとして、心臓が飛び跳ねた。



「何言ってんだよ、愛理。

オレは別にそんなこと……」



「桜介は嫌らしいよ。

このスケベ！」



愛理はそう言うと、怒りながら桜介から離れていった。



女の気持ちって難しいなぁと、桜介は心の中で思いながら、小さなため息をついていた。