あやかしの集う夢の中で
「桜介君、何だか愛理ちゃんが怒っちゃいましたね」



愛理が怒った事情を理解していないカノンが無邪気な笑顔で桜介に話しかけてきた。



桜介はそんなカノンに苦笑いを浮かべて、こう言った。



「何で女の子ってさ、ちょっとしたことで不機嫌になるのかなぁ？

今の愛理みたいにさぁ」



桜介がカノンに悩みを打ち明けると、カノンは桜介を励ますようにこう言った。



「ドンマイです、桜介君。

女の子の気持ちはミステリーです！」



桜介はカノンのアドバイスにならないアドバイスを聞いて、ちょっと困ったような笑顔を浮かべた。



そして世の中の女の子がカノンみたいにいつも上機嫌なら楽なのにと桜介は思っていた。



「あっ、桜介君。

また別の夢妖怪たちがやってきました。

何だかとても強そうです」



カノンがそう言ったので、桜介が前を向くと、そこには十体ほどの二メートル級の夢妖怪たちが武器を片手に迫っていた。



そしてそんな恐ろしい敵たちと一番近い位置にいるのは、怒って一人で先に進んでいった愛理だった。



桜介がそれに気づいたのとほぼ同時に、新たに現れた夢妖怪たちは愛理をターゲットに定めていた。



「おい、愛理！

今すぐ逃げろ！」



桜介は夢妖怪たちに襲われそうになっている愛理の背中を見つめながら、大きな声で叫んでいた。



愛理はそんな桜介の声に気づきながらも振り返らず、迫り来る敵をにらんでいた。
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