あやかしの集う夢の中で
愛理の強引な言い分で、すぐに二つのチームができ上がった。



桜介はカノンとの癒しの冒険を夢見ていたが、その夢はあっさりと消え去っていた。



「行くよ、桜介。

舞ちゃんの大切な夢を守りに」



愛理はそう言って、桜介の顔を見つめていた。



愛理は大きな瞳とショートカットの髪がチャームポイントの美少女だ。



夢の世界の愛理は金色の髪で白色の着物を着ていたが、それはそれで制服姿の愛理とは違った魅力がある。



学校中の男子が今の愛理を見たら、愛理がコスプレしてるみたいだと言って、よろこぶに違いない。



でも、桜介がこんなにも男子からの人気がある愛理を恋愛対象として見れないのは、きっと幼い頃から愛理と一緒にいて、愛理を知りすぎているからに違いない。



桜介はそんなことを考えながら、愛理を見つめていると、愛理が不機嫌そうに桜介にこう言った。



「ちょっと桜介。

さっきから私の顔をじっと見て、いったい何なの?

私の顔に何かついてる?」



「いや、別に……」



桜介はそう言って、愛理から目をそらした。



そんな桜介の背中を愛理は平手で強く叩いた後に、また桜介に話しかけた。



「ねぇ、桜介。

右と左、どっちに行こうか?」



背中を強く叩かれた桜介は、その痛さに顔を歪めた。
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