あやかしの集う夢の中で
(子供の頃から頼りなかった桜介が今日だけは頼もしく見えるよ。

私ね、頼りない桜介を見ながら、いつかこんな日が来ないかなぁって思っていたんだ。

あの桜介が頼りになるこんな日を)



十体の大きな夢妖怪たちが出てきたあと、新たな夢妖怪たちはなかなか出てこなかった。



桜介と愛理の二人は舞の大切が夢が放つ微かな光を目指して、二人で横に並んで歩いていた。



幼稚園の頃はよく二人で並んで歩いていた桜介と愛理も、小学生の頃には互いに性別の違いを意識し、並んで歩くことはほとんどなかった。



最近までは愛理の方が背が高かったが、中学三年生になった今では、背の低い桜介も愛理の身長に追いついていた。



愛理は横目で桜介を見ながら、桜介と過ごした時間についてあれこれ考えていると、桜介
がそんな愛理の視線に気づいて愛理に話しかけていた。



「何だよ、愛理。

オレの顔に何かついてるか?」



「別に……。

ただ何となく桜介を見てただけだよ」



「もしかして、夢の世界で活躍するオレを好きになったりしないよな」



「じょ、冗談言わないでよ。

桜介を好きになるとか、本当にセンスなさすぎだから」



愛理はむきになって桜介にそう言ったが、胸がドキドキして、顔が赤くなっている自分の変化に気づいていた。



愛理はそんな自分の変化に気づかれないように、必死に話題を変えていた。
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