青は奇跡
先生の音読が心地よく耳に響く。
午後の窓際はとても眠い。
この状況で起きていられる人なんていないんじゃないか。
隣をそっと盗み見ると、彼は眠らずに外を見ていた。
何かあるのだろうか。
真剣に何かを見る眼差しは、授業中でも休み時間でもよく見かけた。
……分からない。
わたしには、ただ青い空しか見えない。
彼は、空を見ているのだろうか。
それとも、空よりも遠い何かを見ているのだろうか。
一体何が彼をそれほど真剣にさせるのか。
ふいに、彼の顔が動いた。
ゆっくりと、前を向く。
それから、わたしの方へ目線をずらした。
…目が、合った。
焦ったわたしは見なかったフリをして、ひたすら教科書を見続けた。
どうしよう、どうしよう。
見ていることを、気付かれてしまった。
下を向いていても分かる、隣の視線。
前見てよ、と思えば思うほど、こちらを見てくる気がする。