青は奇跡
正直、楽しい。
もしかしたら、小さい頃以上に楽しいかもしれない。
お祭りの色に染まった世界は見ているだけでも飽きない。
「……の……か……の?」
何かを言われているのは分かるけれど、お祭りの喧騒にかき消されて何を言っているのかよく分からない。
首を傾げると、夏川くんがしゃがんで耳元でこう言った。
「欲しいもの他にないの?」
また、心臓が跳ねた。
なんだか、すごくどきどきする。
低い声が鼓膜を振るわせる。
焦って首を横にぶんぶん振ると笑われた。
……あ。
初めて見たかもしれない。
わたしに笑ってくれたのなんて、これが初めてだ。
こんなに優しい笑い方するんだ。
思わずじっと見ていると、顔を逸らされた。
……見過ぎちゃったな。
「腹減った。これ買うけど、いる?」