青は奇跡
「……」
花火が終わったあとも、まだ音が遠い。
中央の方はまだ夏祭りの熱で冷めないのだろう。
かすかに子供の笑い声、盆踊りの音、パチパチと何かが燃える音。
「もう遅いだろ」
「……えっ」
夏川くんはよく聞き取れなかったのだと思ったのか、わたしの耳に唇を寄せた。
「遅いだろ、お母さん心配するだろうから送る」
「……う、うん。ありがとう……」
どきどきして、まともに顔を見られない。
それに、顔が熱い。
熱が出たんじゃないかってくらいに熱い。
……夜で良かった。
こんな顔、見られたら余計に恥ずかしくてますます赤くなってしまいそうだ。
「じゃ、帰るかー」
立ち上がろうと下に手を置いた時、指先が夏川くんの手に触れた。
「ごっ、ごめん」
「……ん」
その後はなぜか顔を見られなかった。
そして、夏川くんはさっきまでとうって変わって素っ気なかった。