青は奇跡
夏休み
「お、藤野は自習か」
「あ、はい……」
「さすがだな。夏休みでも空いた時間を見つけて来るなんて」
「……ありがとう、ございます」
「でももうすぐ最終下校の時間だから帰りの用意してな。
気を付けろよ」
「はい」
夏休みだけれど、わたし以外に自習で学校に来ている人はあまり見かけない。
家で勉強していても集中出来ない時はこうして学校で勉強している。
たまに3年生の先輩が受験講習で来ていたくらいで、教室と図書室は離れているからほとんど人に会わない。
キリのいいところまで問題を解き終え、首を軽く回す。
これからあの夏の夕方特有の、逃げ場のないような熱さの中を歩くのだと思うと、このまま暗くなるまで学校にいたくなる。
カウンターで本の整理をしている司書さんに挨拶をして廊下に出ると、既に暑い。
図書室の中にいる時はちょうどよかった膝までのスカートが、ここでは鬱陶しい。