青は奇跡







「出来たかー?

じゃあ藤野、これ前で書いてくれないか」





名前を呼ばれた瞬間、心臓が止まりそうなほど驚いた。


それから止まっていた血が一気に顔に上ったかのようにわたしの顔は熱くなった。




俯きながら小さく頷き、立ち上がる。


ぎこちない足取りで黒板まで行き、ノートに書いた数式を写していく。




誰もわたしのことなんて気にしていないと頭では分かっていても、背中に視線が突き刺さる気がしてならない。





「…出来ました」





チョークを置く音がやけに響く。


この先生の確認はいつも長い。





…早く。早く正解か不正解か言ってよ。


早く席に戻りたい。


今なんて振り向いたら絶対だめだ。





「…うん、正解だ」





ほっとして早歩きで自分の席に戻った。




隣を見ると、かったるそうに先生の解説を聞く夏川くんがいる。




昨日は休んでいたのに今日はいる。


何か彼なりに基準があるのだろうか。


…基準を知りたい。




それが、わたしが夏川くんを気にするようになったきっかけだ。





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