青は奇跡





気まずいのがわたしだけというのも何となく癪なので、気にならないふりをして問題に向き合った。





でも、隣の僅かな動きも気になってしまう。


どうしてだろうか。




「…今日は、晴れ」


「…え」


「今日の天気」


「…てん、き」





どういう意図か測りかねているのに反応してしまい、オウム返ししか出来ない。




じわりと手に汗が滲む。


そっとスカートで拭い、次の言葉を待つ。




ああ、でも、今、わたしは話しているんだ。


電話でしか話したことのない、隣の席の人と。





「晴れないと、困る」


「…え?」


「晴れてくれないと、困る」





どうしてだろう。


なぜ、晴れていないと困るのだろうか。


だけど、わたしはそれを聞くことは出来ない。


聞いてもいいのかもしれないが、朝からあの「よそ行き」の目を向けられるのは心苦しいものだ。




会話が終わりなのかよくわからず、わたしは黙って下を見た。


無機質な数式ばかりが並んでいる。






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