青は奇跡
「じゃ、なんで俺が嫌な思いしたか分かるか?」
「……それは、」
「分かんねえのに謝るな」
思わず通学鞄の持ち手を握る手が震えそうになる。
……どうしよう。
油断したら泣いてしまいそうだ。
夏休みに約束をドタキャンされても涙なんか出なかったのに、今は心が痛い。
「……ごめんね。
あ、わ、わたしちょっと急がないといけないから。
じゃあまた明日……」
燦の返事も聞かず、ただ走った。
後ろの様子が気になったけれど、振り返ったらまた何か言われそうで出来ない。
まあ、追いかけられてもわたしのことだから逃げ回るんだろう。
「はあっ、はあっ……」
いつの間にかずれていた眼鏡を直し、また家に向かって走った。
家に着いてからも何がいけなかったのか考え続けた。
勉強している時も、料理をしている時も、お母さんと会話している時も。
余程深刻そうな顔をしていたのか、お母さんは「具合が悪いなら早く寝なさい」とさえ言ってきた。