不細工芸人と言われても
好きになるのが怖い
再び、夢のようである。

俺のリビングに、カホがいる。

カホは、ハンバーグの火加減を見ている俺の横で、目をキラキラさせている。

「美味しそう! !」
「昨日からこの肉だねは仕込んで、一日冷蔵庫で置いているから美味いぞ。」
「本格的。」
「スペシャルだから、これにカリカリベーコンと目玉焼き、チェダーチーズもトッピング」

「贅沢過ぎるー! これは、なんでレタスのおしりのとこ切り込み入れてるんですか?」
「これは、こうやって下にして氷水につけるの。そうすっと葉っぱがシャキッとする。」
「へええ。」
「ほら、食うてみ」
一枚ちぎってカホの口に放り込む。
「ほんとだー! 新鮮!」
モグモグしているカホを見て、ハッとする。
俺は、何をやってんだ。。恋人きどりか。
恥ずかしくなって目をそらし、目の前の料理の下ごしらえに集中する。
カホは、全然そんなことは気にしていない様子で、俺の手元を覗き込んだり、あれやこれや聞いてくる。

なんだよ、これ。 このシチュエーション。
一緒に住んでるみたいじゃないか。 俺は年甲斐もなくドギマギしてしまう。
「もういいからあっちで静かに待ってろ。」
「ごめん。邪魔した。怒られちゃった。」
カホは、舌を出していたずらっぽく笑って、はいはいわかりましたよーお客様はあっちで優雅に待ってますーと言いながらリビングの方に戻っていく。

俺はいつもこうだ。 ほんとはずっと近くにいてくれた方がいいのに、気持ちとは裏腹な態度を取ってしまう。
自分の方が年上なのに、すっかり余裕のないところに格好悪く思う。

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