不細工芸人と言われても
デザートは、パンナコッタとフルーツ。
少し甘めの白ワインを冷やしておいた。

「高岡さん、レストランひらけますね。」
「売れなくなって、引退したらそうするつもりなんでね。」

そうそうこうやってソファに隣同士座って、ゆっくりと。

カホは、目を丸くして
「高岡さんはいろんな意外性を持っていて、今日だけでもいろいろ驚いた。」

「ま、冗談だけどな。昔あまりにも売れてない時には本気でそう思ってた。」

パンナコッタののせたスプーンを口に運ぶ。
「おいしい!」

俺の中の狩猟の精神がむくむくと湧き上がる。 そのかわいい唇を今すぐにでも奪いたい気持ちをグッと抑え、ワインを一口含む。

「なんか、高岡さんからいっぱい元気をもらっちゃったな。
おいしいもの食べて私もいろいろ頑張ろって思った。」

俺は苦笑して首をかしげる。 なんも、してないけどな。
ただただ下心のみで突き動いているんだが。

「なんかあったの?」
カホは、ゆっくり首を振ってえへへっと照れたように笑う。
「たいした事はないんです。 でも、いろいろ行き詰まっちゃう事ってあるでしょ。
前にも言ったけど、メンズのファッションやりたいんだけど、なかなか思うようにいかなくてライバルに先越されちゃったりして、落ち込んでたんです。」
「今のテレビ担当はいや?」
「いやではないですよ。 楽しいし、勉強させてもらうことたくさんだから。」
「いずれはフリーとかのスタイリスちゃんになりたいの?」
「うーん、まあそこまでなれたらいいですけど。でも、普通に結婚とかもしたいですし。」

「…………。」
まあ、そうだね。そうだろうよ。そしてそんな相手もいるんだろうし。

「あ、今、結構ふつーって思ったですよね?」
「いやいや、そおなんだろうなーと思ってさ。女の子の一番の夢は好きな人のお嫁さんになることだろ?」
「高岡さんは、私の事すっごい子どもだと思ってます? まあ、男の子だってそれは同じでしょ。好きな人と結婚したいって。」
「男の子は、いろいろ複雑です。 だから別に一人でもいいっていう派です。ていうかその方が楽。」
「ふううん。」

やっぱり、俺はこんないい子を、気軽にその時だけのちょっとした浮ついた気持ちで手を出すわけにはいかない。

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