不細工芸人と言われても
深夜になるにつれ、急に雨が降り出した。
けっこうなどしゃ降りである。

「すっげー雨だな。」
「………ほんとだ。」
「帰るの面倒くさいなら、泊まってく?」
まだ、一緒にいたい。
「え。」
「これじゃあ、いくら徒歩五分でも傘さしたらびしょ濡れだ。」
「でも、大丈夫ですよ。降ったりやんだりしてるから、その時を狙って帰ります。」

「…………そっか。」
あんまり食い下がるのもよくない。
雨がやまないように祈るしかねえな。

「まあ、もうちょっとゆっくりしてけば。飲もう。」
「うん。」

俺は、カホのこれからの仕事について聞いてみる。
「カホちゃんは、嶋村仁のところでどんな仕事するの?」
「ほら、私、メンズのスタイリストやりたいって言ってたじゃないですか?
なので、女性ファッション誌でも恋人役とかのモデルさんの担当する事になりました。
女性誌からしたら、脇役ですけど、でもやりがいあります。
仁さんのスタイルを壊さないようにもしないといけないし、難しいけど頑張る!」

そっか、変な男に捕まらなきゃいいけどな。
顔の良いモデルの男に囲まれて働くカホを想像して心配になる。

でも、またそれを言うと口うるさいオッサンの説教になるから黙っておく。

「そっか、良かったな。 頑張れよ。」
「うん!」

キラキラしたカホの眼を見て、俺は複雑な気持ちでいっぱいになる。



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