不細工芸人と言われても
後日、正式にこの仕事のオファーが来たらしいのだが、いろいろと横やりやしがらみが絡んで、結局は相方のカドだけが、嶋崎仁のファッションショーにMCとして出ることになった。
カドがピンで出演しているバラエティで共演しているモデルちゃんと二人でのMCなんだそうだ。

コンビでやっていると、こういう仕事の偏りや、どっちかだけが呼ばれるなんてことはザラだから、気にしていたらキリがない。
けれど、正直、俺はカホにさえ会えれば、カホがどんな様子で仕事をしているのかさえ確認できれば良かったから、今回の件はひどくガッカリした。

「悪いな。今回は俺オイシイのもらっちゃったわ。」
カドはウキウキして言う。
「お前は、たくさんいるモデルやモデルの卵とどうこうなりたいっつう意味でオイシイって言ってんだろ?」
「ホントに申し訳ない。連絡先交換できたら、合コン必ず開催するから!」
俺が落ち込んでる内容を完全に相方は誤解している。
ま、いいけど。
「別に、いーよ。そんな合コンどーせ俺は道化で終わるんだっつーの。しかも、八頭身の背の高い女と並んでいいことなんかひとつもねえからな。オネエチャンの腰あたりが俺の胸あたりにくるだろ。」
カドは、ゲラゲラ笑って
「宇宙人発見の写真みたいになあ。」
「言い過ぎじゃ、ボケ。」
俺は、カドの頭を叩いて突っ込む。
横で聞いていたマネージャーが、俺を哀れに思ったのか口を挟む。
「高岡は、ショーよりもお前にとって良い仕事がきたんだよ。それでスケジュールが合わなかった。」
「へええ、何や?」
カドは興味津々で聞く。
「映画だよ。前回の端役なんかよりだいぶキーマンの役だよ。次も期待に応えられるようにセリフ一生懸命覚えろよ。」
「へーい、、、。」

カドは気の毒そうに言う。
「映画は割に合わん。セリフ覚えたり、演技の研究したりして時間食うのに、実入りが少のうて。」
「ほんまですわ。カドさん、羨ましいですわあ。」

なんて言いつつ、俺は、好きだけどな。俳優の仕事。 自分じゃないみたいになれるのがおもしろい。
けれど、カホと会うチャンスがなくなったのには落胆するしかなかった。

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