不細工芸人と言われても
横にいるよしのは、急に神妙な顔になって、俺の方に真正面に向き、正座をする。
「な、なんだよ。おまえ、怖えって。」
俺はうろたえる。 ああ、避けて通れないのかもしれない。本当は、逃げ出したい気持ちである。
俺は、内心覚悟を決める。
「まあ、今回の件、高岡にだまし討ちするような感じで企画がスタートして申し訳ないと思っています。まずは、ごめんなさい。」
よしのは、ぺこりと頭を下げる。
「………………。」
そのまま頭を下げたまま、よしのは言う。
「そして、好きです。 ふられるのわかってて言います。 企画の方向は別として、きちんと直接伝えたかったから。」
ああ、すごいストレートにきたな。
俺は、胸が傷む。
そして、なぜかカホの顔が真っ先に浮かぶ。
こんな時になんで?
この間、嶋崎仁がカホの事を話に出すからだ。


「…………ありがとう。 こんな男でもそう言ってもらえるのは嬉しいよ。」
「はい!ストップ!」
よしのは、顔をあげて、手を挙げて俺に皆まで言うなという仕草をする。
「…………………。」
「それ以上は、もう言わなくてもわかってるから。」
「何が?」
「ブスでもブスなりに、傷つくんで。泣いちゃいそうなんで。」
「…………………。」

< 54 / 108 >

この作品をシェア

pagetop