不細工芸人と言われても

「美味しい。幸せ。」

俺だって。プラス横にカホがいるんだからな。
俺は、よしのに言われたことを思い出す。
俺は、カホにこの気持ちを伝えるべきなのだろうか。
そんな事を考えているとついつい無口になってしまう。
でも、そんな時、カホもいつも黙ってそばにいる。俺が喋りたくない時は、そんな沈黙も気にせず外の夜景を眺めながらゆっくりワインを飲んでいる。
こういうところも一緒にいて居心地がいい。

俺はやっと口を開く。
「仕事は、大変なの?」
「うん。覚えることもいっぱい。叱られてばっかりだよ。でも、楽しいからなんとかやっていける。」
カホは、少し苦笑いをする。
「変な奴はいないか?いじめられてないか?男に言い寄られてないか?」
カホは笑って、
「大丈夫だよ。あいかわらず高岡さんは、私の保護者みたいな事を言う。」
「ちゃんと寝てるか?風呂入ったか?歯、磨いたか?」
「ドリフか!?」
カホが笑う。 俺は、このままどうしたらいい。

「あ、この間、仁さんが高岡さんに飲み屋で会ったって。」
「………ああ。」
なんか試されるように、カホのことを話してきた事を思い出す。
「おまえ、なんか俺のことあの人に言ってる?」
「?なんで?」
「いや、、、なんか。」
「仁さん、ホントにチキスタとして自分のショーに出てもらいたいみたいです。」
「ふうん。カドスケでいいじゃん。俺なんか見栄えも良くねえし、そういうキャラじゃないよ。」
「嫌なんですか?」
「そういうわけじゃないけど。なんかこう調査されてるような感じがした。」
カホは笑って少し納得したように言う。

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