不細工芸人と言われても
「高岡さんは、お正月休みどおするんですか? もしかしてお休みないとか?」
「うーん。まあ、年末進行でずっと忙しかったからお正月はお休み。相方も家族いるしね。ちゃんとハワイでも行って家族サービスしないとさ。」
「高岡さんもハワイ行くの?やっぱり芸能人は。」
「行かないよ。俺は、ボンヤリしてるうちに休みの計画しそびれた。 寝正月だな。」
「もったいない。彼女と行かないんですか?」
「だーかーらー彼女はいない。」
「よしのさんとは?」
「あいつとはそんなんじゃないの。言ったろ?」
「ふううん」
「カホちゃんは?お正月どうするの?」
「私も実家に帰るだけ。」
「………ふうん。」
そういや、福岡に彼氏がいるんだっけな。

「帰らないで、俺とどっか温泉でも行こう」
俺は、何を言ってんだ。
「え」
カホはビックリして俺の顔を見る。
「冗談だよ。」
俺は笑って取り繕う。 あーあ、全然おもしろくねー冗談だな…。

カホはあははと笑い、
「高岡さんと一緒に行く温泉って、すごい秘境って感じ。テント張って 猿と一緒に外の露天風呂に入るとかー。」
「ああ何箇所か知ってるぞ。猿とも一緒に入ったし、カピパラとも一緒に入った事がある。」
カホは、カピパラ〜と言いながら笑い転げる。

まあ、いっか。
そんなに笑ってくれるならさ。

ああ、でもこの正月フラリとひとり旅もいいな。
それこそ秘境に。誰も俺なんか知らないところに。
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