不細工芸人と言われても
次の日、俺はレンタカーを借りて、カホのアパートの前に時間通り到着する。

しかし、急になんなんだよ。
あの時は、冗談みたいな感じで話が終わったじゃないかよ。
しかも、いちタレントと外で会うのは一応控えてるって言うから、無理矢理俺の部屋で会っていたわけで。

年末年始に二人で温泉って、これじゃ恋人じゃねえかよ。
週刊誌に撮られたら、言い訳にもなんねえよな。

約束の時間に五分遅れて、カホはアパートの階段を降りてきた。
ニット帽にアウトドアのダウンにボアブーツ。大きなリュックを背負って、山登りに行くみたいな格好だけど、さすがスタイリスト。なんかオシャレで今日もかわいい。

「おはよう。」
カホは、少しはにかんで微笑み、助手席にするりと乗ってくる。
「これって、高岡さんの車?」
「ううん。レンタカー。俺は車持ってないよ。ほとんど乗る機会ないからね。」
「ありがと。なんか私ワガママ言ったみたい。」
そんなことねーよ。 俺は、マジで嬉しいんだから。

「なんか、俺がいつも行くようなロケだと思ってる?」
「え?なんで?」
「だって、山登り行くみたいな格好だから。」
「そうじゃないの?テント張って飯盒炊爨して、猿と露天風呂。」
「アホか。そんなとこ連れて行けるか。とりあえず1日目はちゃんとしたスッゲー良い宿とったからな。」
「行き当たりばったりと思ってた。急だったし。」
「そういう方が良かった?」
「うううん。………それじゃあ、もうちょっとデートらしい格好にするんだったな。」
ちょっとしゅんとするカホが、かわいい。
デート、か。
やっぱ、そうだよなあ。
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