不細工芸人と言われても
しばらく、お互い無言で、テレビの光と音だけが二人の間を囲む。

「ねえ、高岡さん。」
沈黙を破ったのは、カホだ。
まっすぐ俺を見つめる目に吸い込まれるように、俺もカホの目を見つめる。

気がついたら、柔らかいものが口に当たる。
俺は眼を見開いたまま、その状況を理解するのに時間がかかった。
カホは、俺の浴衣の胸元をキュッと掴み、俺にキスをした。

え、ちょっちょっちょっと待て、おい。
そしてそのままなぜかスローモーションのように、時を感じた。
俺は畳の上に押し倒されている。
カホは俺の上にのしかかり、上から俺を見下ろす。
な、なんで?
おかしいだろ。逆ならありえるけど、なんでこうなるんだ?
俺の願望が、、常に妄想していた映像が、そのまま逆転して夢を見てるんか?


「私、高岡さんが好き。」
カホは、今にも泣き出しそうな顔で、そう囁く。
俺は眼を見開いて、ただただ驚いてカホを見上げる事しかできない。
胸の鼓動が早く打つ。 うそだろ?ドッキリか?

もう一度、カホは俺に覆いかぶさったまま、カホの唇が重ねられる。
お互いの浴衣の生地が擦れる音がする。
これは、夢ではない。
はっきりとカホの甘い香りと柔らかい唇を感じ、目を閉じる。
俺はそっと、彼女の髪を優しくかきあげるようにして頭を撫で、その唇を受け止めるように少し口を開け舌で舐めあげる。
そして、ゆっくり俺は身体を起こして、俺の膝の上にのったカホのふわふわのショートの髪を優しくすいて、カホの目を覗き込む。
マジ、かよ。
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