最後の手紙
 葉月の手は震えなかった。

私はイスを引いて、向かい側に座る。

折りたたまれた便箋が開かれる前に、ウェイトレスさんがオーダーを取りに来た。

 そんなものはどうだっていいから、考えもしないでコーヒーを。

こんな場面こそドラマで見ていた。そういう時に人はとりあえずコーヒーなのだ。

 無言のまま、もしかして息もしてないんじゃないかと思うくらい、静かに目だけを動かしている。

ずいぶん長い手紙だ。
しゃべる量が多い人間の手紙は、やっぱり長いのだろう。
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