最後の手紙
 搭乗アナウンスに、隆一朗は救われていた。

危うく彼らしくない計算ミスをしでかすところだった。

 やっぱり少しはナーバスになってる。

空港のこんな空気、日本を離れるということ、一人になるということ。


――同じ空の下だと言っても、それは違う言葉で人々が指を差す空なのだ。

 それは怖いところ。
そんな遠くに行くなんて。

「それじゃっ、どなたさまもお元気で。気をつけて帰ってくださーい」

「バカ。気をつけるのはおまえだろ」

「オレじゃなくてパイロットかも。そういう意味で言ってんの。先輩は運転荒いから」
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