最後の手紙
「おまえがそれ言うか?」

「言いますよー。少なくとも廃車なんてマネはしてません」


 エスカレーターを下りて右に曲がり、その姿は見えなくなった。

なってしまった、という事実が、私たち見送り班一同に影を落とす。

 ここにとどまったところで状況は変わらないし、変えたいわけでもない。

隆一朗は別に誰かが強制されたわけじゃなくて、自らの強い意志でもって、私たちから離れて行くんだ。

 なんて愚痴っぽい言葉を選んでいるんだろう。雰囲気に流されて言葉使うなって、私も叱られるべきかもしれない。

この出発ロビーという場所がまた、なんともそういう空気なもんだから。

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