最後の手紙
2.運び屋
桜田葉月はヒコーキに背を向けて座っていた。
頭に入ろうはずもないのに、ハードカバーの本などを両手で持っている。
ゲルマン民族史。うわ。
「葉月」
「え、あ? あれ? なんで。どうして?」
『絶対に見送りに来た人間が通るはずのないところだから』選んだはずの店に、座っていた時間については、後ほど聞いてみるとして。
私はカバンからお届けの品を取り出し、差し出した。
ぴたりと、葉月のパニックが終了する。
私は指定通りにいつもよりも低い声で、ドラマみたいにつぶやいた。